+Care Books:ニセ医学と無駄な医療

皆さんこんにちは。管理人のニシトモヒロです。


 ココロとカラダにいい本をご紹介する「+Care Books」のコーナー。今日は皆さんに『ニセ医学に騙されないために』と『絶対に受けたくない無駄な医療』をご紹介します。


 最近、本屋では

「医者は患者を薬漬けにして金儲けをしようとしてるぞ!騙されるな!」

といった類の本と

「アンチ医療を吹聴して、患者さんを危険な民間療法に誘導する怪しげな本がたくさん出てるぞ!騙されるな!」

といった類の本が、並んで平積みされていたりします。

さらには、その中間的な類の本まで出てきていて、もう何を信じればいいやら・・・の状態ですね。


 こういった本は、たぶん医療的な基礎知識がないと、読めば読むほど混乱すると思います。

 というか、私も研修医のときに「抗がん剤は患者さんを苦しめるだけだ」とか「もっと患者さんに優しい夢の治療があるのではないか」と思っていたことがありました。それが今では抗がん剤治療を専門に扱う仕事をしていますから、基礎知識があろうがやっぱり混乱するのね、というところだと思います。


 +Care Projectの目標のひとつは「自ら考え、自分で自分の体を守り」というところですが、そのためには医療や健康に関する情報をうまく扱えるちからが求められます。

 一般的に、そういったちからのことを「ヘルスリテラシー」といいます。

 

 「ヘルスリテラシー」は、学校では教えてもらえない能力です。

 色々な病気を経験したり、本を読んだり、専門家の意見を聞いたりするだけでは十分とは言えず、「考え方」の訓練をする必要があります。


 「聞いたことをそのまま鵜呑みにしない」ことがその第1歩。

 例えば、「あなたの病気には○○って薬がいいみたいよ」という情報を聞いたとして、それをそのままOK!と受け入れるのではなく

「誰が『いい』って言っているのかな?」「その『いい』っていう根拠は何かな?」と思って欲しいのです。


 例えば、「いい」って言っているのが××大学の教授、と突き止めたとしても、それだけで信用してはいけません。大学教授といっても色々な人がいますし、専門もそれぞれです。いくら肩書きが立派な人が「いい」と言っていても、その方の個人的な感覚だけで治療の善し悪しを決められては困ります。

 また「いい」っていう根拠が、海外の著明な大学の研究論文の結果と突き止めても、それだけで信用してはいけません。研究にも「質」があり、まだ動物実験レベルだったり、人間が対象のものでもまだ4~5人に試しただけのものだったり、とかということもあります。理論的には正しそうでも、実際の患者さんを相手にして実験をしてみたときには、理論通りにいかない研究なんて山ほどあるのです。


 この『ニセ医学に騙されないために』はそういった考え方を勉強するにはとても良い本です。


 それに対して、『絶対に受けたくない無駄な医療』という本。

 そもそも、いわゆる「ニセ医学」といわれる怪しげな民間療法などに患者さんがはまるのは、医療者側にも責任があります。

 不勉強や不誠実な医療を提供してきた結果、患者さんから信頼を失いつつあるのもひとつの要因と思います。これまで多くの医療機関がいわゆる『無駄な医療』と言われる、過剰診療を行っていた(あるいは今も行われている)のは事実です。

 この本には、「カゼに抗生物質を出さない」や「抗精神病薬を安易に処方しない」といった項目がありますが、実際日本ではこういった過剰な医療が(患者さん側が求めている場合もありますが)行われています。それが「無駄」な場合、患者さん側に害になりますので、こういった現状は変えていく必要があります。

 しかし、現実的に「カゼに近い状態なのだけど細菌感染で抗生物質が必要」だったり「精神症状を緩和するのに抗精神病薬が必要」な場面は絶対にありますので、いわゆるアンチ医療のように「全ての薬は毒!毒を盛ろうとしているのは医者の陰謀!」というのは極端な話です。


 これからの医療は、医療者と患者さん・ご家族などがうまくパートナーシップをつくって、治療に取り組んでいく必要があります。医療者も、医療を受ける側も勉強が大事です。


 医療をとりまく、アンチ医療・標準治療・過剰医療がどういう関係にあり、実際にいち市民の立場でどうやって考えていけばいいかを学ぶために、まずはこの2冊を読んでみることをオススメします。