なかはらびと:001 ピープルデザイン研究所 須藤シンジさん 【第1部】

「なかはらびと」は、武蔵小杉を中心とした中原区・川崎市において、様々な分野で活躍されたり、興味深い活動をされている方へ、+Care projectのコンセプトテーマに関連したインタビューを行う企画です。


「なかはらびと」第1回は、2014年7月に、川崎市とまちづくりについての包括協定を結んだ、ピープルデザイン研究所代表の須藤シンジさん


(川崎市とピープルデザイン研究所の包括協定・ピープルデザインそのものについて詳しく知りたい方はこちら!


ピープルデザイン研究所は「既存の考え方にとらわれずに、性別・国籍・年齢・身体・意識の違いによる課題をクリエイティブに解決していく、そんなシブヤらしい福祉のかたちをつくるNPO」(ピープルデザイン研究所Webページより)ですが、どういった経緯で川崎でプロジェクトを進めることになったのか、そしてこれから何をしていこうというのか、という部分をお伺いしました。


インタビュアー:西(西)

回答:須藤(須)



西:よろしくおねがいします。


須:こちらこそ。


西:まず、「ピープルデザイン」についてお話し頂きたいのですが、これまでのユニバーサルデザインや、いわゆる「障害者のためのもの」というのとは違う、ということについてお聞かせ頂きたいのですが。


須:バリアフリーだとかあるいは数十年前に北欧のデンマークで立ち上がったノーマライゼーションという考え方がありますよね。どちらもこのゼロという地点の、マイナスからゼロという地点へ「引き上げてあげよう」という、いわばハンディキャッパーや障害者といわれる人達の気の毒な側面を助けてあげようっていう、どうしても「弱者救済」的な思考が残っていたんだと思うんですよね。

それに対してピープルデザインというのは、皆さんゼロ以上のところにいて、背が高いか低いかくらいの違いで、みんな違いあっていいよね、違いがあることこそが当たり前だよね、というような価値観そのものを作っていきたいと。そのための考え方として、「ピープルデザイン」という考え方を立ち上げたんです(図参照)。


西:なるほど。ピープルデザインのプロジェクトは、これまでは渋谷とか原宿といったところで展開してきたと思うんですけど、これからは川崎でしていくということになりました。これはどういった経緯でなったのでしょうか。

 

須:障害を持った人と持ってない人、あるいは少数派(マイノリティ)と言われている人の目線で感じる課題解決をしていくことが、それ以外の大多数(マジョリティ)に対しても、非常に有用なことになるであろうというところが根っこにはあります。そのためのモノづくりであるとか、あるいはイベントを通じて混ざり合うことをお見せするような施策を12年展開してきたわけです。


で、具体的なきっかけがですね、その中の活動のひとつに、横浜FCさんっていうJ2のチーム、三浦カズさんがいらっしゃるチームで、「サッカースタジアムでお仕事をさせてくれませんか」という取り組みをしたんですよ。

どういうことかといいますと、従来は地域の障害者の方を試合があるときにご招待するっていうケースが非常に多かったんです。でも、日本において概ね6%の方達が何らかの障害をお持ちだと言われている現状があって、そこで100人のスタッフが働いているとすると、普通に混じっているとしたら6人、ハンディがある人が働いていてもいいわけですよね。でも、中々それが実現せずに、ついつい招待「されちゃう」みたいな。むしろその100人に対して6枠を、私たちが地域のハンディキャップをもった方々をキャスティングしていきますんで、働く場面を下さい、っていうそういう取り組みをずっとやってたんですね。


そのモデルをですね、実際にうちの知的障害をもっている次男がね、ほぼシーズン中、2週間に1度はホームのゲームに通っている地元フロンターレ、等々力競技場で相談すれば良かったなと、素朴に思ったのが去年(2013年)の秋。ついては、フロンターレさんに、横浜FCさんで展開しているこのモデルを一緒にできないだろうかと相談したのが、きっかけなんです。


西:これを機会にフロンターレさんとできないかと。


須:まずはノックしたんですよ。

 

そこでフロンターレさんのほうから、

「すごく興味はあるけれども、等々力っていう競技場そのものは市の施設であるし、そこを借りて展開しているホームチームではあるけれども、市との取り組みも見えると良いですね」

 

というアドバイスを頂いたんですよね。で、なるほどと思いましてね、そのアドバイスを頂いてすぐ、川崎市役所に行ったんです。そこで、障害の就労に関わる部署(健康福祉局)のTさんっていう方が、応対に出て下さったんです。そこで、Tさんからは後で伺ったんですけど、他の団体からも毎日のように色々な提案がされるんだと。だけど、ピープルデザインはとてもユニークで、他とは違うものを感じたと、そうおっしゃってくれたんです。それをきっかけに、Tさんが「その考え方は面白いですね、一緒に考えましょう」と、すごく応援して下さるモードで。

 

逆に色んな課題だとか市内で起こっている状況だとかも教えて頂きました。例えば障害者をどこまでをもって障害者というか、っていうところで言うと、僕自身は身体・知的・精神というゆるやかなカテゴリーしか持ち合わせてなかったのですが、実際に虐待を受ける経験をすることで不登校になってしまうとかそういう子がフリースクールにたくさんいて、元気な成人男子女子のフィジカルをもっているんだけれども、その気持ちの傷を負ったことにより越えられないものがあるとかいうのも、ハンディキャップといえるんじゃないでしょうか、というのもTさんから教えられてなるほど、と。自分たちの住んでいるまちの少数派に対して、知ったようなことを言っていた割には実態を見ていなかった自分にも気づいていったんです。

 

そんな中、三浦副市長とお話しをする機会に恵まれて、「これは、市としても立体的に取り組む意味を感じられる。ピープルデザインというのは確かに新しい切り口かもしれない」ということで、(福田)市長のご理解も頂きながら、ゆるやかにかつ確実にフロンターレさんとのキャッチボールができる状況につながっていったんです。

 

他にも、富士通さんグループで言えばアメリカンフットボールのXゲームの方や、等々力アリーナのバスケットボールの方に直接ご相談に行ってみたりとかですね、言うなれば「いいね!」という声が段々埋まってきて、そこに映画を含めて僕らがもっているコンテンツを、川崎市という土俵で年間展開するに足るプランとして浮かび上がってきたんです。フロンターレさんには今シーズン2回ほど、チラシを配ったりという横浜FCとやっていることと同じスキームでやっていきたいと。

 

できれば来年は・・・等々力競技場が改修工事やっていて、できあがってきますよね。概ね10年後の川崎市政100年くらいまでのときには、ハードが立派なモノになるじゃないですか。川崎市の誇れる象徴としてのフロンターレ、そこで今度は2週間に1度のホームゲームの時に必ず、地域のボランティアやサッカーファンに混ざって、6%の障害者のみならずこれからは外国籍の方だとかあるいはご高齢の方含めて、いわばダイバーシティ(多様性)でファンを迎えていると。働く場としてですね。その実現をみるということは非常に象徴的でないかと思っているんですよね。

 

体育会系ではフロンターレ。

 

文化系ではいろいろあるんですけど、例えばラチッタデッラでの企画も考えているんですが、あそこはイタリアの風景を模して道がデコボコでしてるでしょう。聞くところによると、車いすの方からの苦情も何件かあるようです。でも、ヨーロッパって道が本当にデコボコしてるんですよ。それって、誰かが押してやればいいじゃないかと。逆に、「押しましょうか」と、惑じゃないギリギリのセンスあるおせっかい、というか嫌味のない親切をまちのあちこちで、人間の好意ですればいいじゃないかというのをお見せしていくようなことをね、10年後には常態化させたいんですよ、まちの空気として。そのためには、みんなそういう気持ちはあるんだけども、できない、という方がほとんどだと思うんですね。ついついシャイなので。だったら、やってるところを見せちゃおうみたいな。イベントの中で「やっていいんだ」ということを見せられることを考えています。


(第2部へ続く)

困っている人がいたら、私が手伝いますよ!という"心意気を表明するファッションアクセサリー"のコミュニケーションチャーム(右がスタンダードモデル、左がアルファロメオコラボレーションモデル)。

"お腹に赤ちゃんがいます"というサインのマタニティバッジの逆パターンの発想で、福祉作業所で働く障害者の手によって作られ、セレクトショップのSHIPSで売られています。二年前、渋谷から始まったこの企画は現在全国拡散中で、現在は武蔵小杉のみなさんの発案で「川崎版オリジナル」を構想中だとか。